2014-01-03から1日間の記事一覧

その他の「重過失」の判断事例

・飲酒帰宅したホステスが、ガスストーブで室内の暖をとりながらベツドで寝そべつて週刊誌を読んでいるうち寝入つてしまい、ベツドからずり落ちた掛蒲団にガスストーブの火が燃え移り、アパートを全焼させた場合重過失にあたらない(新潟地判昭和53年5月…

業務関係の「重過失」の判断事例

・ボイラー夫が北側焚口と蓋の隙間から火の粉が飛出し、前面床上に散乱している紙屑等に着火して燃え広がり大事に至る危険が存することを容易に予見し得たにも拘らず、このことに全く意を致すことなく漫然ボイラー室を立去り、番台で世間話をしていたために…

たき火と「重過失」の判断事例

・周囲を建物で囲まれた狭い場所でダンボールのように軽くて風に飛ばされ易い物を燃やしたのに、漫然と火は消えたものと考えて現場を去ったため燃え残りの火が周囲の建物に飛び移って本件火災を招来した場合、重過失がある(東京地判昭和58年10月13日…

暖房器具と「重過失」の判断事例

・掘こたつの側部・底部の木枠の蓄積過熱による発火は重過失に該当しない(東京地判昭和58年2月28日判タ498号117頁)。 ・ストーブに給油中、カーペツトに相当量の灯油をこぼし、燃えかすの切れ端等がそこに落ちたにもかかわらず、落ちた後を十分…

一般家庭の「重過失」の判断事例

・使用したトースターの電源を切らぬまま帰宅したため、過熱発火した場合には重過失がある(東京地判昭和42年8月2日判タ213号168頁)。 ・浴槽に水が入つてない状態で風呂の空だきをしたことから発生した火災は重過失にあたらない(東京地判昭和5…

11.「重過失」の意義

重過失とは、通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見すごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指すものと解するのを相当す…

10.失火責任法と国家賠償法2条との関係

国家賠償法二条による賠償責任についても、失火ノ責任ニ関スル法律の適用がある(神戸地伊丹支判昭和45年1月12日判タ242号191頁)。 「国家等といえども財政上の限界があり、国家賠償法四条、五条によれば、失火責任法の適用を前提としているもの…

9.失火責任法と国家賠償法1条との関係

公権力の行使に当る公務員の失火による国または公共団体の損害賠償責任については、失火ノ責任ニ関スル法律が適用される。(最判昭和53年7月17日民集32巻5号1000頁、最判平成1年3月28日集民事156号427頁)。 火災発生の可能性の比較的…

8.失火責任法と工作物責任(民法717条)との関係

この点、学説は百花繚乱を呈しているが、裁判例は以下の6つに分類・整理されている。(1)失火責任法が適用され民法717条の適用はないとするもの 大判明40年3月25日民録13輯328頁、大判大4年10月20日民録21輯1729頁等。 (2)民…

7.失火責任法と使用者責任(民法715条)との関係

被用者が重大な過失によって火を失したときは、使用者は、被用者の選任または監督について重大な過失がなくても、民法715条1項によって賠償責任を負う(最判昭和42年6月30日民集21巻6号1526頁、大判大正4年1月30日刑録21輯58頁)。

6.失火責任法と監護者の責任(民法714条)との関係

民法712条、713条は、責任無能力者の免責を定め、民法714条が監督者の責任を定めているところ、責任無能力者が失火を生じさせた場合に、監督者が責任を負うためには、監督者自身の監督における重大な過失が必要である(最判平成7年1月24日民集…

5.失火責任法と債務不履行との関係

債務不履行については適用されないので、賃借人が失火により借家の返還義務が履行できなくなった場合の賃貸人に対する民法415条による責任は失火責任法によって免責されない(大判明治45年3月23日民録18輯315頁、最判昭和30年3月25日民集…

4.失火責任法における「失火」の意義

「失火」とは、「人の過失に因り火災を惹起すの意」であって、「過て火を失し火力の単純なる燃焼作用に因り財物を損傷滅燼せしめたる場合は総て其中に包含」される(大判大正2年2月5日民録19輯57頁。火薬の爆発から生じた損害の賠償を目的とする訴に…

3.失火責任法が適用される場合の立証責任

失火者に対し不法行為による損害の賠償を請求する者は、失火者に重大な過失があつたことを立証しなければならない(大判大正4年10月20日民録21輯1729頁、最判昭和32年7月9日民集11巻7号1203頁)。

2.失火責任法と憲法29条との関係

不法行為によって権利を侵害された被害者は、不法行為者に対し、法の定めるところに従って損害賠償請求権を取得するにすぎず、失火責任法は被害者の有するなんらかの既得の損害賠償請求権を侵害するものではないのだから、失火責任法は憲法29条に反しない…

1.失火責任法の立法趣旨

古来の慣習に従い、かつ、失火者に巨額の損害を賠償させるのを避けるため、失火責任法が制定され、民法709条、710条の適用を排除した(大判明治40年3月27日新聞422号17頁)

「大コンメンタール失火責任法」の企画意図

失火責任法は、「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」という、ワンツイートでつぶやける法律です。この法律についてコンメンタールを作ることはできるか、という1つの試みをやってみ…