その他の「重過失」の判断事例

・飲酒帰宅したホステスが、ガスストーブで室内の暖をとりながらベツドで寝そべつて週刊誌を読んでいるうち寝入つてしまい、ベツドからずり落ちた掛蒲団にガスストーブの火が燃え移り、アパートを全焼させた場合重過失にあたらない(新潟地判昭和53年5月22日判時908号74頁)
・隣家から煙が出ていると注意されたのに適切な措置をとらなかつたため隣家に類焼させたことにつき、重過失がない神戸地判昭和60年7月30日判タ567号225頁
・仏壇のろうそくが倒れて失火した場合に、ろうそくを燭台に差して仏壇の棚に立てておけば、燭台が不安定であるとか、ろうそくの底の穴がろうそく差しの部分とかみ合っていない等の特別の事情がない限り、自然に消火するものと通常予測されるから、特に地震や道路を通過する車両の振動、動物の進入など燭台に衝撃を与える事由の発生が普段にあると認識すべき状況でもない限り、燭台に立てたろうそくが倒れ失火することを予測することは極めて容易であったとはいえない等から、ろうそくの点火者及びその家族に重過失はない(東京地判平成7年5月17日判タ902号141頁)
・屋根瓦葺工事中の作業員が煙草の吸がらを投捨てたところ、隣接物置横のシートに火がつき近隣建物等が焼失した場合に、吸がらが物置横のシートに落ちて右シートが燃え出すまで、その火が消えないことを予見できたとはいえないとして重過失が否定された事案(東京地判昭和46年3月6日判時638号83頁)