4.失火責任法における「失火」の意義

「失火」とは、「人の過失に因り火災を惹起すの意」であって、「過て火を失し火力の単純なる燃焼作用に因り財物を損傷滅燼せしめたる場合は総て其中に包含」される(大判大正2年2月5日民録19輯57頁。火薬の爆発から生じた損害の賠償を目的とする訴においては、失火ノ責任ニ関スル法律の適用はないとした事案)。
失火ノ責任ニ関スル法律」所定の「失火」とは「過って火を失し火力の単純な燃焼作用で財物を滅失、毀損させること」をいうものであって、セルロイドが自然分解して爆発し、火災を生じさせた場合に失火責任法の適用はない(東京地判昭和53年11月30日判タ380号116頁)。
立体駐車場での車両出火で、その被害の範囲も外部に延焼することなく、立体駐車場の内部にとどまっているとしても、「失火」に該当する(東京地判平成22年4月20日判タ1335号143頁)。
(火薬よりも危険性が低い)可燃性物質等の熱分解反応による出火事故は「失火」ではない(東京高判平成25年2月28日判時2181号3頁)
故意の放火は失火ではないので、同法は適用されず、民法709条による(我妻有泉コンメンタール3版1324頁)