暴力行為等処罰に関する法律一条の二第一項が刀剣類を「用ヒテ」と規定しているのは、それらを本来の用法に従って使用した場合に限定する趣旨であり、日本刀による峰打ちはこれに該当しないとした事案(広島高判昭和46年1月12日判タ259号221頁) #審神者向け判例

ところで、暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条ノ二第一項(以下単に本条項という)は、銃砲または刀剣類を用いて人の身体を傷害する行為が危険性の高い悪質な犯罪であるばかりでなく、現在この種の行為がいわゆる暴力団の構成員によつて多く犯されている実情にかんがみ、これを特別の犯罪類型として刑法第二〇四条所定の傷害罪より重く処罰しようとする趣旨で設けられた規定であり(第四六国会衆議院法務委員会議録第一五号、一、二頁参照)、右の立法趣旨や本条項が傷害の手段として使用される凶器の種類を「銃砲又ハ刀剣類「と限定していることなどに徴すると、本条項に銃砲または刀剣類を「用ヒテ」とあるのは、銃砲または刀剣類をその本来の用法に従つて使用した場合に限定する趣旨であり、銃砲にあつては弾丸を発射すること、刀剣類にあつては刃または切先で切りまたは突くことを意味するものと解するのが相当である。したがつて、たとえば拳銃の銃身で殴打しあるいは日本刀で峰打ちを加えるなど銃砲刀剣類の使用が本来の用法に従つたものといえない場合は本条項にいう「用ヒテ」にあたらない。また、右例示のように銃身で殴打しあるいは日本刀で峰打ちを加えようとしたところ、なんらかのはずみで弾丸が発射しあるいは刀の刃先で相手を切りつけるなど行為者の予期しない結果を招いたような場合には、銃砲刀剣類を本来の用法に従つて使用したと同じ外形的事実がみられるけれども、行為者に銃砲刀剣類を本来の用法に従つて使用する認識がもともとないのであるから、本条項に定める罪の故意を阻却し右の罪の成立が否定される。