看護師が入院患者2名の足の爪を剥離させたとして起訴された傷害2件の事案について,捜査段階の自白の信用性を否定し,一部は傷害の故意がない,一部は正当業務行為として違法性が阻却されるとの理由により,無罪が言い渡された事例(福岡高判平成22年9月16日判タ1348号246頁) #ナース

被告人が甲及び乙の各右足親指の爪切りを行ってその爪床を露出させた行為は,医師との連携が十分とはいえなかったこと,結果的に微小ながら出血が生じていること,甲の右足親指についてはアルコールを含んだ綿花を応急処置として当てたままにして事後の観察もせず放置してしまっていたこと,事後的に患者家族に虚偽の説明をしたことなど,多少なりとも不適切さを指摘されてもやむを得ない側面もあるが,これらの事情を踏まえても,被告人の行為は,看護目的でなされ,看護行為として,必要性があり,手段,方法も相当といえる範囲を逸脱するものとはいえず,正当業務行為として,違法性が阻却されるというべきである