広告媒体目的で広告宣伝業者が所有する気球を無断で撮影した写真をポスターにして宣伝することは不法行為の余地があるが、気球を広告媒体として利用することは当時ほとんど知られていなかった等として過失を否定した事案(東京高判昭和53年9月28日東京高裁判決時報民29巻9号206頁) #気球

一般に、物の所有者は、その所有権の範囲を逸脱し若しくは他人の権利・利益を侵害する結果となるような場合を除き、その所有物を如何なる手段・方法によっても使用収益することができ、第三者は、所有者から使用収益を承認されている場合を除いては、直接にせよ間接にせよ、他人の所有物を利用することによって所有者の使用収益を阻害してはならない法的関係にあるものといわなければならない。これを本件気球についていえば、右気球を特定商品ないし特定企業の広告媒体として使用することにより利益をあげることが広告宣伝業者たる控訴人の所有目的と認められることは前叙のとおりであるから、第三者が控訴人の右目的の実現に先立つて、右気球を特定商品ないし特定企業の宣伝に利用し、それにより、控訴人の主張するように、右気球に特定の商品ないし企業のイメージを密着させてしまって、所有者である控訴人が使用収益の目的を達成することを不可能にしたとすれば、控訴人が右気球の所有者として有する利益を侵害したものというべく、かかる控訴人の所有目的及びこれを阻害する結果の発生を予見しうべき地位にある第三者が、あえて前記のような挙に出たときは、控訴人に対し損害賠償の責に任ずべき場合の生じうることは、これを否定することができない。そして、本件におけるように、気球を撮影した写真を素材とするポスターによって宣伝行為をすることも、ここにいう右気球の利用に含まれると解すべきである。