ビデオ内の被撮影者は特定できなかったものの、その容貌、体格、発育状況等から児童と認められるとし、被撮影者に思春期遅発症や小人症などであることを窺わせる徴候はない以上合理的な疑いを容れない証明に達したとした事案(大阪高判平成12年10月24日速報集平成12年146頁) #児童ポルノ

 所論は,本件各写真からは,各被撮影者の体格や発育状況をかろうじて識別できるものの,一般に,身長や乳房の発育状況などには個人差があり,思春期遅発症や小人症が存在することなどを考慮すると,体格や発育状況は,実際の年齢とは必ずしも一致しない。したがって,乳幼児を除けば,写真によるだけでは,その被撮影者が,医学的見地から見て,100パーセントの確率で18歳未満の者であると断言することはできない。医師A作成の鑑定書によれば,本件各写真の被撮影者の年齢が,18歳以上である可能性があると指摘されている。したがって,本件各ビデオテープの各被撮影者が18歳未満の児童であることについて合理的な疑いを容れる余地がある,という。
 しかし,上記関係証拠,ことに捜査報告書ないし写真撮影報告書中の本件各写真から窺われる各被撮影者の容貌,体格,発育状況などに照らすと,本件各ビデオテープの各被撮影者はいずれも児童であると認められる。なるほど,当審証人である医師Aの証言及び同人作成の前記鑑定書によれば,本件各写真の被撮影者が思春期遅発症や小人症である可能性を医学的に否定することはできず,各被撮影者の年齢が18歳未満であると,100パーセントの確率で断言することはできないという。しかし,もとより,刑事訴訟における証明は,医学等の自然科学における証明とは異なり,裁判官に合理的な疑いを容れない程度に確実であるとの心証を抱かせれば足りるものであるところ,医師Aの当審証言によれば,本件各写真の各被撮影者が思春期遅発症や小人症などであることを窺わせる徴候はないというのであるから,上記の証言及び鑑定書によっても,本件各写真,ひいては本件各ビデオテープの各被撮影者が18歳未満の者であることに合理的な疑いを容れる余地はないというべきである。