傷害暴行の事実を争う少年の抗告を棄却する理由を平易に示した事案(大阪高決平成21年2月7日家月61巻6号120頁)

大阪高等裁判所
平成21年(く)第62号
平成21年02月17日
少年 A (平成5.9.11生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
第1 抗告の趣旨及び理由
  君の書いた抗告申立書によると、君の言いたいことは、大津家庭裁判所は、平成21年1月21日に、君の傷害、暴行の事件について、君を初等少年院に送致するという裁判(一般短期処遇)をしたけれども、君は被害者を殴っていないのに、警察官から無理矢理殴ったと言わされた結果、殴ったという事実をもとに少年院に送致する裁判がされたのだから、高等裁判所で、もう一度考え直して、その裁判を取り消してほしいというものでした。
第2 抗告理由に対する判断
  次に、この高等裁判所の検討の結果を書きます。結論として、君の言い分を聞き入れることはできません。その理由を書きます。
  君が、誰よりも先に被害者の右肩を右手の拳で殴ったことは、被害者だけでなく、君の共犯とされているBやC、Dも認めています。
  君は、殴っていないのに警察官に無理矢理殴ったと言わされたと述べていますが、君自身が、平成20年12月15日に逮捕された時の警察官に対する 弁解録取 (君の言い分を聞く手続)や、その翌日の検察官に対する弁解録取でも、被害者を殴ったことを認めていて、家庭裁判所の調査官に対しても被害者を殴ったことを認めていました。そして、君が平成21年1月20日に書いた「裁判官に伝えたいこと」という書面にも、警察官から無理矢理殴ったと言わされたという記載はありません。また、その翌日の家庭裁判所での裁判においても、君は、裁判官に、被害者が怒鳴る感じでくってかかってきたので殴ったと自分で説明しています。
  このように、君が被害者を殴ったことは事実として認められますし、君自身が、逮捕されたときから裁判までの間、殴ったということを認め続け、家庭裁判所の調査や裁判といった警察官がいないところでも、殴ったことを認めていたという経緯から考えると、君が主張しているように、警察官から無理矢理殴ったと言わされたとは考えられません。
  したがって、家庭裁判所が認めた君の非行事実に間違いはなく、その事実に基づいて君を初等少年院に送致した処分も何ら問題はありません。
  以上の理由で、君の言い分を聞き入れることはできないと考えました。
第3 適用法令
  少年法33条1項
 (裁判長裁判官 湯川哲嗣 裁判官 榎本巧 裁判官 細谷泰暢)