社会内処遇ではなく中等少年院送致が適切な理由を平易に説明した事案(福岡高決平成20年2月8日家月60巻8号66頁)

福岡高等裁判所
平成20年(く)第8号
平成20年02月08日
少年 A (平成2.10.15生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
 君の書いた抗告申立書を読むと、「長期(1年)ではなく、短期にしてほしいと思います」「これからは家出をせず、サイトにもアクセスせず、ちゃんと学校にも行き、高校卒業したいと思います」と記載されているので、君の抗告の理由というのは、短期の処遇勧告を付けてほしかったということだけでなく、できれば社会の中で立ち直るチャンスがほしいということであると考えました。
 そこで、君の言い分も考えに入れた上で検討しましたが、この高等裁判所も、君を中等少年院(長期処遇)に送致することにした福岡家庭裁判所久留米支部の判断は正しいものと考えましたので、その理由を伝えます。
 今回の非行は、君が、平成19年6月ころまでは高校にもきちんと通って特に問題のない生活を送っていたのに、出会い系サイトで年上の女性と知り合ってからは、勉強よりも遊んでいるほうが楽しくなってしまって、7月下旬から、出会い系サイトで知り合った女性の家に無断外泊をするようになり、その後は出会い系サイトで知り合った男性と性交渉することと引き換えにその男性の家に寝泊まりすることを繰り返し、その間、心配する母親から家に連れ戻されても、すぐに家を出てしまい、10月からは知人から誘われるまま風俗店で働いて、性的サービスを提供してお金をもらい、12月23日に緊急同行状が執行されて少年鑑別所に入るまでの約5か月間にわたってほとんど家出を続けていたことから、将来、売春防止法違反、 窃盗 などの犯罪行為を行うおそれがあるというぐ犯の事案です(少年法3条1項3号イないしハ)。
 今指摘したところに君の問題点がよく表れています。君は、遊びたいといった目の前のことを優先してしまって、これからしようとしていることが自分にとってどれだけ危険なものであるかということや、このまま家出を続けていればどのようなことになってしまうのか、ということをよく考えないまま行動しています。また、自分をもっと大事にしなければならないという考えも足りないようです。そして、短い間に君の行動が悪い方向にどんどん広がっていっていることからすると、君の問題点というのは、君が考えているほど簡単に解決できるものではありません。
 そうすると、君に必要なのは、少女苑の先生から、君の問題点や、二度とこのような失敗をしないためにはどうすればいいのかということを分かりやすく教えてもらって、それを身に付けることです。そのためにはある程度時間をかけて勉強することが必要で、短期間では中途半端に終わってしまいます。
 君が今回のことを反省して高校を卒業したいと思っていることや、君のお母さんが君の帰りを待っていることは分かっていますが、今は君が立ち直るために大事な時期なので、少女苑での勉強をがんばってもらいたいと思います。
 このような理由から、君の言い分を聞き入れることはできないと考えました。
 そこで、少年法33条1項により、主文のとおり決定します。
 (裁判長裁判官 陶山博生 裁判官 中牟田博章 裁判官 浅香竜太)