スキー団体の札幌オリンピック冬季大会選手強化合宿を主宰した選手強化本部長等が、業務上保管する計788万円余の選手強化合宿費用を横領した事件につき有罪判決を下した事案(オリンピック冬季大会強化合宿費用横領事件・札幌地判昭和47年1月17日判タ274号245頁) #オリンピック

被告人両名の本件犯行がおくまでも純白裡に迎えられるべきオリンピック事業に大きな汚点を残し、これに参加する選手や関係者ひいては国民に大きな不安と動揺を与えたことを思うとき、その責任はきわめて重いといわなければならない(ここで具体的な犯行事実を中心として事案を確認した裁判所として強調したいことが二つある。その一は本件が巷間あるいは報道関係者等によりオリンピック事業のアマチュアリズム等に深く根ざした矛盾の一現象のように取り沙汰されているように思われ、事実、無関係とは思われない点があるけれども、事件が本質的にこの問題にかかわつていると認めるのにはいささか躊ちよをおぼえることであり、むしろ、本件オリンピック事業の一つである選手強化合宿という舞台においてたまたまその関係役員が経理を処理するにあたつて行つた不正経理事件であつて、アマチュアリズム等の問題と必然的な関連を肯定すべき事件ではないということであり、その二は、本件をめぐつて、被告人らの功績を語り、善良な市民としての面のみを知る一部の者の慰めともいうべき言動が認められるけれども、裁判所等第三者がこれを考慮するのは格別、被告人らがこれに甘えるようなことは許されないということであり、事案の真相を最も知る筈の本人としてあくまでも厳しく自省する気持を忘れてはならないということである。)。