「大コンメンタール失火責任法」の企画意図

失火責任法は、「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」という、ワンツイートでつぶやける法律です。この法律についてコンメンタールを作ることはできるか、という1つの試みをやってみます。

2.失火責任法と憲法29条との関係

 不法行為によって権利を侵害された被害者は、不法行為者に対し、法の定めるところに従って損害賠償請求権を取得するにすぎず、失火責任法は被害者の有するなんらかの既得の損害賠償請求権を侵害するものではないのだから、失火責任法は憲法29条に反しない(最判昭和53年4月14日集民123号541頁)

3.失火責任法が適用される場合の立証責任

 失火者に対し不法行為による損害の賠償を請求する者は、失火者に重大な過失があつたことを立証しなければならない(大判大正4年10月20日民録21輯1729頁、最判昭和32年7月9日民集11巻7号1203頁)。

4.失火責任法における「失火」の意義

「失火」とは、「人の過失に因り火災を惹起すの意」であって、「過て火を失し火力の単純なる燃焼作用に因り財物を損傷滅燼せしめたる場合は総て其中に包含」される(大判大正2年2月5日民録19輯57頁。火薬の爆発から生じた損害の賠償を目的とする訴においては、失火ノ責任ニ関スル法律の適用はないとした事案)。
失火ノ責任ニ関スル法律」所定の「失火」とは「過って火を失し火力の単純な燃焼作用で財物を滅失、毀損させること」をいうものであって、セルロイドが自然分解して爆発し、火災を生じさせた場合に失火責任法の適用はない(東京地判昭和53年11月30日判タ380号116頁)。
立体駐車場での車両出火で、その被害の範囲も外部に延焼することなく、立体駐車場の内部にとどまっているとしても、「失火」に該当する(東京地判平成22年4月20日判タ1335号143頁)。
(火薬よりも危険性が低い)可燃性物質等の熱分解反応による出火事故は「失火」ではない(東京高判平成25年2月28日判時2181号3頁)
故意の放火は失火ではないので、同法は適用されず、民法709条による(我妻有泉コンメンタール3版1324頁)

5.失火責任法と債務不履行との関係

債務不履行については適用されないので、賃借人が失火により借家の返還義務が履行できなくなった場合の賃貸人に対する民法415条による責任は失火責任法によって免責されない(大判明治45年3月23日民録18輯315頁、最判昭和30年3月25日民集9巻3号385頁)。

6.失火責任法と監護者の責任(民法714条)との関係

民法712条、713条は、責任無能力者の免責を定め、民法714条が監督者の責任を定めているところ、責任無能力者が失火を生じさせた場合に、監督者が責任を負うためには、監督者自身の監督における重大な過失が必要である(最判平成7年1月24日民集49巻1号25頁)。
子どもがマツチ遊びをしていたところ、建物の納屋にあつた麦わらに燃え移り建物を焼失した場合に、父親がマツチの取扱について、家の中で使用することはもちろん外に持出すことのないよう注意していた等の事情があれば、子どもの監督に重過失はない(福岡地判昭和46年7月9日判タ269号278頁) 

7.失火責任法と使用者責任(民法715条)との関係

被用者が重大な過失によって火を失したときは、使用者は、被用者の選任または監督について重大な過失がなくても、民法715条1項によって賠償責任を負う(最判昭和42年6月30日民集21巻6号1526頁、大判大正4年1月30日刑録21輯58頁)。

8.失火責任法と工作物責任(民法717条)との関係

この点、学説は百花繚乱を呈しているが、裁判例は以下の6つに分類・整理されている。

(1)失火責任法が適用され民法717条の適用はないとするもの
大判明40年3月25日民録13輯328頁、大判大4年10月20日民録21輯1729頁等。


(2)民法717条に失火責任法をはめ込み、工作物の設置、保存に瑕疵があり、それが所有者又は占有者の重大過失による場合のみ責任があるとするもの。
たとえば、工作物の設置保存の瑕疵によって火災が生じた場合には、民法717条と「失火ノ責任ニ関スル法律」が共に適用され、従って、工作物の設置保存に瑕疵があり、その瑕疵が重大な過失に基づくとき、この瑕疵によって生じた火災の損害に対し、工作物の占有者または所有者は賠償義務を負担することになるとした大阪高判昭44年11月27日判タ244号167頁。
その他大判昭和7年4月11日民集11巻609頁、大判昭和8年5月16日民集12巻1178頁等。


(3)民法717条が適用され失火責任法の適用はないとするもの
 例えば、配電会社が送電のため架設した電路の保存に瑕疵があるため火災を起したときは、配電会社は、右電路の占有者または所有者として民法717条により責任を負うべきで、この場合には「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用はないとするもの(東京高判昭31年2月28日高民集9巻1号130頁。ただし、最判昭和34年2月20日民集13巻2号209頁がこの点と異なる理由で破棄しており、また、判評153号135頁がこれを下記(4)と分類していることに留意が必要。)
 その他、この流れに属すると思われる裁判例としては、東京地判昭和35年5月11日法曹新聞154号11頁、大阪地判昭和50年3月20日判時797号125頁、東京地判昭和55年4月25日判時975号52頁、京都地判昭和59年10月12日判タ545号191頁、東京高判平成3年11月26日判時1408号82頁、東京地判平成5年7月26日判タ863号232頁、那覇地判平成19年3月14日自保ジャーナル1838号161頁等がある。


(4)工作物の瑕疵から直接生じた火災については民法717条により、延焼した部分については失火責任法の適用を認めるもの
 土地の工作物から直接生じた火災にもとづく損害賠償責任については民法七一七条一項を適用し、これから延焼した部分にもとづく損害賠償責任については失火責任法を適用すべきものと解するのが相当とした上で、火災が起るについて占有者に重大な過失があったか(下記(5)と異なり、「設置保存の瑕疵」が「重過失」によって起こったかという問い方をしていないことに注意)を検討した事案(仙台地判昭和45年6月3日判タ254号271頁)。
 その他、判例タイムズ503号74頁の分類では、東京地判昭和40年12月22日判タ187号181頁、仙台高秋田支判昭和41年11月9日下民集17巻11・12号1051頁も含まれるが、これらは、それぞれ、「少なくとも工作物の設置、保存の欠陥から直接生じた火災については失火責任法の適用はないものと解するのが相当である」「工作物の設置保存の瑕疵に基づく火災により直接受けた損害については少くとも「失火ノ責任ニ関スル法律」を適用しない」としたもので、延焼部分について、どのような対応とすべきかについて明言したものではない(つまり(4)か(5)か必ずしも明らかではない)ことに留意が必要であろう。類似のものに、新潟地判昭和58年6月21日判タ508号175頁。
 なお、判例タイムズ768号186頁は横浜地判平成3年3月25日判タ768号186頁も(4)に該当するとするが、この解説では、下記東京地判昭43年2月21日判タ224号229頁をもまた(4)に分類していることに留意が必要である。


(5)工作物の瑕疵から直接に生じた火災については民法717条を適用し、延焼した部分については民法717条に失火責任法をはめ込み、工作物の設置保存の瑕疵が所有者又は占有者の重過失によるときにのみ責任を負うとするもの
判例タイムズ503号74頁及び判例タイムズ545号191頁によれば、東京地判昭38年6月18日下民14巻6号1164頁及び東京地判昭43年2月21日判タ224号229頁がある。


(6)工作物の設置、保存の瑕疵によって火災が発生、拡大した場合においても、工作物がそれ自体火気を発生する等火災予防上特に著しい危険性を持つときを除いて失火ノ責任ニ関スル法律の適用はあると解するもの(東京高判昭和58年5月31日判タ503号74頁)。(なお、これを上記のいずれにも該当しない第6の類型とするものとして判例タイムズ503号74頁)
なお、出火燃焼し易い工作場から出火したことによって、隣家に及ぼした損害については、失火の責任に関する法律の適用は排除されるものと解するのが相当であるとした東京地判昭和45年12月4日判時627号54頁参照。
 

9.失火責任法と国家賠償法1条との関係

公権力の行使に当る公務員の失火による国または公共団体の損害賠償責任については、失火ノ責任ニ関スル法律が適用される。(最判昭和53年7月17日民集32巻5号1000頁、最判平成1年3月28日集民事156号427頁)。
火災発生の可能性の比較的大きい、危険な状態であるのに、消防団員が漫然と「しばやき」をしたことにつき重過失を認め、国家賠償請求が認めた事案がある(岐阜地判昭和56年7月15日判時1030号77頁)。
また、交通規制を行う警察官が,交通規制に用いた発炎筒につき,設置後の状況を確認して,消火,除去することを怠り,少なくとも交通規制で用いられた発炎筒1本について,発炎筒をまたいでいる車両等が存在しているかなどといった設置後の状況を十分に確認せず,確実に消火,除去しなかった場合に,上記警察官の行為には重大な過失があるとして責任を認めた事案もある(東京地判平成22年5月26日判タ1334号109頁)。
なお、消防職員来臨後の行為が問題となったものとして(大阪高判昭和55年9月26日判タ431号92頁、名古屋高判昭和55年7月17日判タ423号97頁、東京地判平成7年10月27日判タ915号100頁、盛岡地判平成8年12月27日判タ957号172頁いずれも責任否定)。

10.失火責任法と国家賠償法2条との関係

国家賠償法二条による賠償責任についても、失火ノ責任ニ関スル法律の適用がある(神戸地伊丹支判昭和45年1月12日判タ242号191頁)。
「国家等といえども財政上の限界があり、国家賠償法四条、五条によれば、失火責任法の適用を前提としているものと解されるので、一応不法行為上の責任については、失火責任法を適用すべく、公の営造物の設置又は管理上重大なる過失のあつた場合にのみ、よつて生じた火災損害につき、国家又は地方公共団体の営造物責任が生ずるものと解するのが相当である」
なお、そもそも従前から多数説は、国賠法4条の民法民法典に限らず、失火の責任に関する法律をも含めた実質民法を指すと解していた点に留意。

11.「重過失」の意義

重過失とは、通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見すごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態を指すものと解するのを相当する(最判昭和32年7月9日民集11巻7号1203頁)

一般家庭の「重過失」の判断事例

・使用したトースターの電源を切らぬまま帰宅したため、過熱発火した場合には重過失がある(東京地判昭和42年8月2日判タ213号168頁)。
・浴槽に水が入つてない状態で風呂の空だきをしたことから発生した火災は重過失にあたらない(東京地判昭和50年9月23日判時815号68頁)
・ガスコンロに油を入れた鍋をかけたまま、何らの措置もとらずに漫然炊事場を離れたため油に引火し火災を発生させた場合、その者には重大な過失があったものというべきである(東京地判昭和57年3月29日判タ474号124頁)。

暖房器具と「重過失」の判断事例

・掘こたつの側部・底部の木枠の蓄積過熱による発火は重過失に該当しない(東京地判昭和58年2月28日判タ498号117頁)。
・ストーブに給油中、カーペツトに相当量の灯油をこぼし、燃えかすの切れ端等がそこに落ちたにもかかわらず、落ちた後を十分確認しないまま卒然その場を離れ、消火の際にも灯油の入つたポリタンクを倒し、火勢を強めてしまい、しかも、消火作業としても無意味な行動をしたのみであれば、重大な過失が認められる(東京地判平成1年10月19日判時1358号122頁)。
・石油ストーブの着火に使用した紙をもみ消した際、給油時にあふれた灯油がしみ込んだ床のカーペットにこぼれた火の粉が原因で火災を発生させ、しかも、火を消そうとして、誤ってポリタンクを倒し消火に成功しなかった従業員には、連続した軽微な過失はあるが、重大な過失があったとはいえない(東京地判平成3年4月22日判時1408号98頁)。
・石油ストーブへの給油に際して、事前にストーブの火を消すこともなく、かつ、カートリッジタンクの蓋の締まり具合を確認しないまま、タンクをストーブの上で逆さまにしたため、蓋の外れた給油口から飛び散った石油にストーブの火が着火して発生した火災につき、重過失が認められた事案(東京高判平成15年8月27日判タ1163号263頁)。

たき火と「重過失」の判断事例

・周囲を建物で囲まれた狭い場所でダンボールのように軽くて風に飛ばされ易い物を燃やしたのに、漫然と火は消えたものと考えて現場を去ったため燃え残りの火が周囲の建物に飛び移って本件火災を招来した場合、重過失がある(東京地判昭和58年10月13日判タ517号134頁)。
・自宅の庭で燃やしたゴミの火が枯れた芝生に燃え移り、近隣の建物を延焼させた事案で、ゴミを燃やしていた者は、芝生への延焼については通常人として相当の注意を払いつつ、消火作業に努め、その後も相当な時間現場にとどまって消火を確認したのであり、いったん消えた火が再燃して火災を発生させることまで予見することは困難であったとして重過失はない(さいたま地判平成16年12月20日判時1904号122頁)。

業務関係の「重過失」の判断事例

・ボイラー夫が北側焚口と蓋の隙間から火の粉が飛出し、前面床上に散乱している紙屑等に着火して燃え広がり大事に至る危険が存することを容易に予見し得たにも拘らず、このことに全く意を致すことなく漫然ボイラー室を立去り、番台で世間話をしていたために火災が発生すれば、これは重過失である(大阪高判昭和41年11月28日民集21巻6号1536頁、最判昭和42年6月30日民集21巻6号1526頁の原審)。
・可燃物の多い店舗内で、電気グラインダーを使つて石のみを研摩していた者が、足もと近くの出火を突然知らされ、驚いて踏消そうとしたが果せず、そのままでは燃え広がるような状態を呈したため、急ぎ、消火用の砂を取りに行こうと戸外へ飛出すに際し、動転していたことと焦りとが手伝つてかたわらに積んであつたガソリン缶を倒し、出火した場合に重過失はない(大阪高判昭和50年1月30日判タ323号183頁)
・製パン工場で、鋸屑自動パン焼炉から小火が起り、その消火をしたが、その際の残火が附近に堆積していた鋸屑に引火し火災を起こした場合に、右工場主には消火に際し残火が落ちてないかどうか慎重に確かめ、その附近に水をまいて完全に消火し、更に右鋸屑を除去するなど万全の措置を講じて火災の発生を未然に防止すべき注意義務があるのに、これを怠つて就寝した過失があり、右不注意の程度は失火ノ責任ニ関スル法律但書にいう重大な過失に当る(広島地判昭和48年3月26日判タ298号272頁)
・ガス事業者の業務委託店がガスレンジの後壁に不燃材を使用しているか否かを確認せず、かつガスレンジ使用者に適切な忠告をすることなくガスレンジとガス栓を接続したことに、業務上の過失があるが、内装工事人に不燃材を使用するよう要請し了承を得られていたため、後壁内部には不燃材が使用されているものと信用していたこと等から、その過失をもって重大な過失とはいえない(浦和地判平成1年9月27日判タ729号181頁)
・引火性の強い接着剤を漫然と点火中の石油ストーブに近接して用いることに重過失がある(東京地判平成3年7月25日判タ780号232頁)
・配管貫通箇所の配管の周囲に5ないし6ミリのすきまがあるモルタル壁と1センチ数ミリしか隔っていないエルボをアセチレンガス切断機で加熱して抜き取る工事を行うに当り、右すきまから右切断機の火炎もしくは火熱がモルタル壁内部に侵入して火災を引起こす可能性のあることが容易に想像でき、かつ、作業員も十分これを認識していたとして、何らの火災防止手段を講ぜずアセチレンガス切断機でエルボを安易に加熱し、更に右作業完了後建物のモルタル壁の火炎の当った箇所が茶褐色に変色していたのに十分確認をせず、そのまま放置したことは重過失にあたる(福岡地判昭和52年9月29日訟月23巻11号1868頁)
・マンション解体工事において、アセチレンガス切断機による鉄骨切断作業中に、高温の溶融塊が飛散して付近の段ボール箱等の可燃物に引火し、隣家に延焼した事故は、防炎シートを設置したり、可燃物を除去するなどの火災防止の注意義務を尽くさなかった工事元請会社従業員の現場監督者及び火災防止措置が講じられていることを確認すべき注意義務を尽くさなかった下請会社従業員の重過失による(宇都宮地判平成5年7月30日判時1485号109頁)
・ガス溶接技能者としてアセチレンガス切断機を使用して鉄骨等を切断する者は、その作業が危険性を伴うことは熟知していたはずであり、アセチレンガス切断機以外の方法を選択するか、仮にアセチレンガス切断機を使用する場合には、アセチレンガス切断機から発生する火花の可燃物への着火を未然に防止するための十分な防火措置を講ずるべき注意義務を負っており、それに違反した場合には重過失があるといえる。(東京地判平成18年11月17日判タ1249号145頁)
・ラーメン店舗の火災事故につき、店舗内装工事の請負人には、ガスレンジの設置に当たり、条例の設置基準に依拠し、壁との距離の確保等につき十分確認し火災の発生を防止すべき注意義務があるところ、断熱材が使用されていたとは認められないのに、壁との距離を条例の設置基準に違反してガスレンジを設置したことは右注意義務に著しく違反する重大な過失がある(東京地判平成8年10月18日判時1613号110頁)
・そばかまどの煙突からの輻射熱により壁面の木ずり部分から出火した場合において、そば店主は煙突の構造、壁からの距離につき専門業者に一任しており、店主は何ら指示もせず、知識も有しておらず同種の設備が火災を起した例はなく、消防署の査察でも具体的警告等のなかつたこと等よりすれば同人に重過失は認められない。(東京地判総和46年11月27日判時661号63頁)

その他の「重過失」の判断事例

・飲酒帰宅したホステスが、ガスストーブで室内の暖をとりながらベツドで寝そべつて週刊誌を読んでいるうち寝入つてしまい、ベツドからずり落ちた掛蒲団にガスストーブの火が燃え移り、アパートを全焼させた場合重過失にあたらない(新潟地判昭和53年5月22日判時908号74頁)
・隣家から煙が出ていると注意されたのに適切な措置をとらなかつたため隣家に類焼させたことにつき、重過失がない神戸地判昭和60年7月30日判タ567号225頁
・仏壇のろうそくが倒れて失火した場合に、ろうそくを燭台に差して仏壇の棚に立てておけば、燭台が不安定であるとか、ろうそくの底の穴がろうそく差しの部分とかみ合っていない等の特別の事情がない限り、自然に消火するものと通常予測されるから、特に地震や道路を通過する車両の振動、動物の進入など燭台に衝撃を与える事由の発生が普段にあると認識すべき状況でもない限り、燭台に立てたろうそくが倒れ失火することを予測することは極めて容易であったとはいえない等から、ろうそくの点火者及びその家族に重過失はない(東京地判平成7年5月17日判タ902号141頁)
・屋根瓦葺工事中の作業員が煙草の吸がらを投捨てたところ、隣接物置横のシートに火がつき近隣建物等が焼失した場合に、吸がらが物置横のシートに落ちて右シートが燃え出すまで、その火が消えないことを予見できたとはいえないとして重過失が否定された事案(東京地判昭和46年3月6日判時638号83頁)